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いかけしごむ 終演報告

終演報告ーー「いかけしごむ」




おはようございます!

熊谷です(*^^*)



こちらでは遅ればせながら、

おかげさまで、劇団第一主義「いかけしごむ」の公演を、

無事全公演終えることができました


ご来場&応援してくださった皆様、ありがとうございました!



これまでのそこそこ大きな小劇場、出演者10人強の大所帯とは打って変わって、

ざ・小劇場らしい距離感と空間でのお芝居、

また二人芝居という、最少人数でのミニマム公演が、

今回の、劇団第一主義としての公演でしたm(_ _)m



皆様、楽しんでいただけましたでしょうか??


ちょっとへんてこりんな作品だったでしょう??()



それもそのはず!


だって、「不条理劇の父」という名を持つ、

知る人ぞ知る、別役実さんの作品をお借りしての公演だったんですから!()



「不条理劇」というジャンルで言いますと、

前回公演「友達」の作者である安部公房さんも、

不条理劇の代表作家さんなのですが、

別役実さんは、さすが「父」とまで呼ばれているほどの方。


その戯曲の数が、安部公房さんのそれよりも何十倍も多い!


そもそも、安部公房さんは、メインは小説家さんらしいので、

戯曲自体、そんなに多くは書かれていないのですが、

別役実さんは、戯曲家さん。


なんとその数、100本以上!!



戯曲集が20冊ほどあって、

それに長いのも短いのもいろいろ収められていて、100本強。


それに加えて、長編の戯曲が、別冊で何冊もまだまだある方。



「安部公房さんの流れで、じゃあ次回公演は別役実さんので……。」と、

安直に提案した熊谷ですが、

いやぁ、まず戯曲を決めるところから大苦戦でしたよね()



てか、今まで別役さんの本は、数本だけ、お芝居としてしか見たことがなく、

台本としては読んだこともありませんでした。


そんな別役さん入門者が、

大御所の方の台本を一気に何十本も読み漁るものではありません()


一時、図書館に通い詰めでした()



まぁおかげで、今回の公演では、

「いかけしごむ」という作品での公演を終えることができたのですが()



さて!

前置きはこれぐらいにして、

終演報告いきますよー!!



今回のお芝居を見終わってから、

「面白かったけど、ちょっとモヤモヤしている。」

「あれはどういうことだったの?」

「今回のお芝居での正解は一体どれ??」

と思われている方は、ぜひ読んでみてくださいませ!


ご自身のお芝居の見方がちょっとだけ変わるかもしれません(*^^*)



それでは早速振り返ってまいりましょう!


今回のお芝居の舞台セットはこんな感じでした



舞台の中央に、占い専用の机があり、

その机を挟んで、前後にずれた位置に、イスが二つ配置されています。


占い師の机の上部には、天井、もとい、天から()ぶら下がっている糸電話。



お芝居を見てくださった方は覚えていらっしゃいますでしょうか?

冒頭で、熊谷がこの舞台セットを説明していたシーンを。



見たまんまなのですが、

いや、もうこの時点でへんてこりん感満載!()



占い師も、お客さんも来ない占い専用の机があって、

その前には「ここに座らないでください」と書かれた看板。


その上からは、「いのちの電話」に繋がっているという、糸電話。




実はこの舞台セット、

台本上に書かれているセットをほぼ再現してはいるのですが、

ちょこちょこ、今回のお芝居用、演出で変えてあります。



元々は、

「舞台中央にはベンチ」「客席から見て舞台右側に占い師の机、その上に灯籠」

「占い師の机の上に電話がぶら下がっている」




……ん?


けっこー違うねぇ??



はい。

変えました。


これは演出としてです!()



はっきりと変えているのは、

わかりやすく言うとベンチですね。


役者は二人ともベンチに座っているつもりでお芝居していますが、

これはお客さんから見て、わかりやすい印象を持ってもらうために、

わざと、物理的にバラバラに配置いたしました。


この演出の狙いは、後ほど説明させていただきますね(*^^*)



そして、もう一つ演出的に変えたのは、「電話」


変えた、というよりは、

今回はこうした、という程度なのですが()


天から()ぶら下がっているという指定はそのまま生かしつつ、

電話の見た目に関して、黒電話だとか公衆電話だとか、その指定はありませんでした。

ですので、第一主義としては、

この電話は紙コップに、糸電話にしてみました。


写真だけで見ると、すんごい浮いているように見えますよね?()


糸の色も悩んだのですが、

思い切って黒にしてみたらあら不思議!


なんか浮かんでるやん!!()


舞台上の黒と相まって、舞台中央にずっといる白い物体。


いやぁ、、、へんてこりんやわぁ()



この糸電話、ぎりぎりまで普通の黒電話かなぁと悩んでいたのですが、

本番の2週間ほど前でしょうか?


第一主義の主宰兼演出の沢渡さんが、

「糸電話にしよう!」と思いついたそうで()



これを聞いたときの熊谷は、

「わ!別役さんっぽい!!」と、一人で楽しくなっていました()


別役さんの作品、天からぶら下がった糸電話、ちょこちょこ出てくるんです()



ま!

そんな熊谷の感想は置いといて()


元々の台本上の指定から、

活かす部分は活かし、変更するところは変更して。



とゆーわけで!


第一主義的別役さんワールドは、こんな感じの舞台セットでお送りいたしました(*^^*)



お芝居の内容、どんなのかちょっとずつ思い出してきましたか??()




まず、熊谷が登場し、

今回のお芝居の舞台セットの説明を軽くいたします。


「暗い夜」「誰も来ない場所にある、占い師の机」「いのちの電話」「座るなと指示されているベンチ」


この説明を、お芝居を見に来てくれたお客さんに説明をし終えると、

ベンチに座ってマイペースに編み物を始める熊谷。


役名は「女」



そこに迷い込んできたのは、

大きなビニール袋を大事そうに抱えた、安月給のサラリーマンの村尾オサムさん。


役名は「男」



安部公房さんの「友達」もそうでしたが、

役名に固有名詞が存在しません。


「女」とか「男2」とか「婚約者」とか。


役割というか肩書きというか。

そんな役名ですので、この後は役者名で説明すると思いますので、

そちらはご了承くださいませm(_ _)m



さあ!

村尾さんが現れてから、お芝居の本編スタートです!




編み物をしながら、

熊谷は、自身が何者かをふんわりと説明します。


「迷い込んできた人々の心の秘密を聞いてあげる聞き手」

「あなたのことが何もかも見える、わかる」



熊谷に問われながら、自身のことを吐露していく村尾さん。

「奥さんが一ヶ月以上前から実家に帰っている」

「イカケシゴムを発明して、ブルガリヤ暗殺団に追われている」



お互いに噛み合っているような噛み合っていないような会話をしながら、

村尾さんは熊谷に問い詰められていきます。


「あなたは奥さんに逃げられて、

思い余って自分の子供を殺してしまった。」

「イカが入っていると言い張っているそのビニール袋の中には、

バラバラにされた子供の死体が入っている。」



そして、ビニール袋の中身を出したとき、

そこから出てきたのは、バラバラにされ新聞紙に包まれた子供の死体。




「あなたの言っていることは真実ではない。」

「真実は、あなたが子供を殺して、その死体を持ち歩いているということ。」


その現実を突きつけたときに鳴ったのは、糸電話。

「いのちの電話」です。

自殺願望者などが一人で抱え込んでいる、知人などには吐き出しづらい悩みを吐露できる窓口として実在する電話相談窓口です。



この「いのちの電話」は、村尾さん宛にかかってきました。


熊谷は、いつも通り「どこかへすぐに相談に来なさい。」と言われたのだと思っていましたが、

実際は違いました。


村尾さんは「死ね。」と言われてしまいます。


ブルガリヤ暗殺団に殺されたくなくて、今の今まで逃げてきたのに。



熊谷は勧めます。

「子供を殺したのだと警察に自首しなさい。」

「そうすることで、あなたは正道に立ち戻ることができるから。」


警察へと向かって去っていく村尾さん。

それを見送る熊谷。




これで一件落着。

ここでこのお芝居が終わるかと思いきや、

熊谷に声をかける人物が現れます。


「すぐ近くで男性の死体が発見された。」

「その死体は、生のイカがいっぱい入った大きなビニール袋を持っている。」


台本上では、この人物は刑事。


第一主義では、この刑事は、声だけで表現いたしました。

今流行りのAI合成音声です()



この刑事から知らされた事実を受け止めた熊谷は、

村尾さんがイカケシゴムを発明してブルガリヤ暗殺団に殺されたのだと悟る。


そして熊谷は自分の過去を吐露します。


「一年前、自分の小さな子供と夫を置いて家を出た。」

「それから間もなく、夫が子供を殺して自首したということを新聞で知った。」


そのうえで、

熊谷は自身の在り方を独白する。


「これが私のリアリズムの世界。」

「私はここから逃げない。

こうやってじっと座っているだけだけれども、この世界の中にいる。」



遠くでパトカーのサイレンが聞こえるが、

熊谷は構わず、ベンチで編み物を続ける。




箇条書き的にではありますが、

「いかけしごむ」はこんなお芝居でした。


皆様、思い出しましたでしょうか??



「誰が」「どうなった」というわかりやすいストーリーではないため、

あらすじが書きづらい!()


結局最初から最後まで書くことになりました()




ここまでで、とゆーより、

お芝居を見終えての感想は、皆様どういったものでしたでしょうか??



「男と女、どっちが言っていたことが真実なの?」

「あれ?私、何か聞き逃したかな?」

「このお芝居は一体何を書きたかったのだろう??」



こんな疑問形の感想を持たれた方、

多かったのではないでしょうか??



さぁお待ちかね!

ここからが解答編です!()


あ、でも、

「解答」と言うと、ちょっと語弊があるかな?


ですが、見終わったあとのモヤモヤを、きっとすっきりできると思いますm(_ _)m




単刀直入に言いますね。


この台本、と言うより、

別役実さんの本は、「答え」や「正解」が書かれていません。


「ヒント」と「情報」だけです!



ですので、「どれが真実なのか」はわかりません。

「この台本のテーマが何だったのか」もわかりません。


だって、書かれていないから!!Σ(゚Д゚)



……え、ええー!!?

そんなのってある!?Σ(_;)



あるんです!


だって、それが別役実さんの本だから!!()




台本には、

舞台セットの説明と、役者が喋っているセリフしか、書かれていません。


あとパトカーのサイレンが鳴るタイミングぐらい。


個々の設定に対する注釈なんて、全くありません(;)


おわかりですか??


役者にとっても、演出にとっても、

はたまた見てくださったお客さんにとっても、

あるのはおんなじ情報源のみ!



とゆーことはですよ??


作品づくりをしていくうえでの情報は、

ほぼほぼ、役者が喋っているセリフしかないわけです!



いやぁおかげでかなり大変でした。


今回の公演の稽古(^_^;)



例えば、、、

そうですね、一つの例として、

熊谷の役が一体何者なのか、書かれていません。


「なんでこの場所に来たの?」

「なんで外で編み物をしているの?」

「なんで聞き手なの??」


この「なんで」に対する答えは、台本上には書かれていません。


書かれていないなら、

自分なりに、この「なんで」を解消していかなければいけないのですが、

でも、どれが正解なのかわかりません。


その指標すら示されていないから。



台本上に見落としがないか、台本とにらめっこもしてみますが、

わかりません。


だって、書いてないから。



どれが正解で、どれが正しい答えなのか、

どう答えを導くべきなのかもわからず、途方に暮れました。


自分的に都合の良い設定を勝手に考えて加えて、その「なんで」に埋めてもみますが、

それをお客さんに伝える術はありません。


だって、お客さんに伝えられる情報源は、

基本的にセリフしかないから。



勝手に考えたセリフを加えれば伝えられはしますが、

それは基本的にご法度です。


だって、作品に対して失礼にあたるから。


作家本人が許諾しているならまだしも、

そこは最低限のマナーとして、

作品に対する最低限の礼儀として、守るべき事柄です。



ですので、書かれていないからといって、

自分なりに設定を加えすぎてもいけないのです。


いつぞやの稽古場日誌で、

熊谷が台本に対しての「二次創作をしすぎていた」という事案ですね()


あくまでも、大元の台本、その設定には沿うこと。



でも、大元の台本が指標であるとしても、

その指標がふわっとしすぎていて、確固たる正解が見つけられません。



悩みましたω;`)




そんななか、

稽古も終盤に差し掛かりつつあるぐらいの時期に、

こんな話を稽古場で話してくれました。



「不条理劇とは、また、その楽しさとは、

作品づくりをする人、また見る人によって、解釈が変わることだと思う。」

「つまり、作る人、見る人の数だけ、正解があるのが、不条理劇の面白さではないか。」



……え?

そんな楽しみ方ってあるんだω`)??



演出の沢渡さんが、

自身の今回の演出方針を確認するのも込みで、話してくれたことです。




不条理劇とはどういうものなのか?

と問われると、すみません、

今の熊谷ではまだちゃんと説明ができません(´×ω×`)


ですので、

今回の公演における不条理劇とは、

「別役実さんの」「ヒントと情報しか書かれていない」

「それに対する答えも正解も書かれていない」作品という定義で進めさせていただきますm(_ _)m


一口に不条理劇と言っても、

おそらく安部公房さんのそれとは種類が違うのかも?と思った熊谷です。


たぶん、不条理劇の中にも、いろんなジャンルがあるっぽいので、

広い気持ちで今は読み進めてくださいませ()




話を元に戻しますね()



今回の演出方針は、

というより、演出の信念は、

「今回のお芝居の正解は一つだけじゃないよ。」というものでした。


お芝居の世界観を作り上げるうえで、その世界観の共有は、

役者共々、座組一同で行いましたが、

演出から「こうであるべき!」という明示はありませんでした。


何故なら、「正解は一つだけじゃなく、たくさんあるから。」



ですから、ぶっちゃけ言いますと、

今回の演出の狙いとしての「こうしました!」というものはハッキリとはありません。


「私はこうしてみました。あなたはどう感じましたか?」というふうに、

ふんわりとさせています。


何故なら、「あなたが感じたことが、たくさんある正解のうちの一つだから。」


むしろ、これが今回の演出の答えです。




ブルガリヤ暗殺団は本当にいたんだ!と思うのOK

イカケシゴムなんて、男の妄想だったんだろう?と思うのもOK

女は、いのちの電話の人だったのかも?と思うのもOK

男は自殺したのかもしれない、と思うのもOK

男は、女の夫だったのだろう、と思うのもOK



ヒントと情報しか無いということは、

一つの確固たる正解が無い、ということ。


別役さんの本は、ほとんどがそんな感じでした。


おそらく、これが別役さんの作風であり、

そしてこれが、演劇の世界で長年愛されている作家さんであることの理由なのでしょう。




お芝居の世界でよく言われていることがあります。

「お芝居に正解はないから。」と。


熊谷的に、この言葉は今までずっとピンと来なかったのですが、

今回の公演で腑に落ちました。


ですので、熊谷が個人的にわかりやすい言葉に言い換えます()


「お芝居の正解とは、確固たる一つだけなのではなくて、たくさんの正解がある」のだと!



「不条理劇とは、作る人見る人の数だけ正解があって、それを楽しむ作品である。」


この考え方のおかげで、一つしかないと思い込んでいる正解だけを求めて役作りに悩んでいた熊谷は、

ちょっと吹っ切れました。


「私なりの今回の正解を作ればいいんだ!」と。



あくまでも台本にちゃんと沿って、

二次創作のしすぎをしてはいけないのですが()

おかげで、悩みすぎてあらぬ方向に行きがちだった熊谷の暴走は小ましになったようには思います()



おかげで、このとき一番悩んでいた最後のセリフ、

「私はここから逃げない。

こんなふうに、ただじっと座っているだけだけれども、この世界の中にいる。」が、

やっとしっくり来る状態で言えるようになりました。




演出に関して、更に補足しておきますね。


今回の演出には、目標がありました。


「お笑いコントにしてはいけない。」という目標です。


それは何故か?


「お笑いコントですよ!」と演出方針で定めてしまうと、

それは、正解は確固たる一つだけだ!という示し方になるからです。



熊谷が腑に落ちた「別役さんの不条理劇の楽しみ方」という考え方とは真逆のものですよね。


「イカからケシゴムを作る」という話題のパートは、

すんごくお笑いコントにしやすいのですが、

ここに重きを置いてしまうと、

台本全体の面白さを伝えることができない、と、演出は思ったからです。



村尾さんも、

「今回のお芝居には、滑稽さは必要だけど、お笑いコントをゴリ押ししてはいけない。」と、

よく言われていました。




この目標を持ちつつ、そして、正解は一つだけじゃなくたくさんある。


これは、演出だけではなく、役者それぞれにもです。


ですので、

今回のお芝居の世界観の共有はしていても、

演出も役者も、個々に思っている正解は共有していません。


それぞれの心の中に存在しているだけです。



だって、正解はたくさんあるから。


役者や演出の思う正解はそれぞれにあるけれども、

見る人によっても、その正解はそれぞれ違う。


おんなじ感じ方かもしれないし、

仲の良い人同士でも、全く違うことを感じ方かもしれない。



強いて言うなら、

「あなたが感じたことが正解」なんです。


だからこそ、

演出、役者間でのそれぞれに思う「正解」は共有しませんでした。


だって、共有しちゃったら、

「正解は一つだけだよ!」と感じさせてしまう可能性があるから。


あくまでも、「こう思っているのかも?」ぐらいの、ふわっとした共有です()


演出や役者二人の、それぞれの正解がバラバラであることを感じてくださったなら、

それはとてもよくお芝居を見てくださってる証拠です(*^^*)




お芝居を見終わったあとに、

「あれは何?」「これは何だったの?」とモヤモヤしていた方、

ちょっとはスッキリできましたでしょうか??


ハッキリとした、確固たる一つの答え、正解がないお芝居は、

見終わったあとに「こうだったのかも?」「ああだったのかもしれない!」と、

いろんな想像を膨らませて楽しんでいただければ、と思います。


少なくとも、

今回の第一主義は、そういうお芝居に仕上げましたm(_ _)m



ヒントと情報だけで、確固たる一つの答えが示されていないお芝居。


答えがない分、見終わったあとにいろんな空想をして楽しめる、という、

お芝居のジャンルの一つとして捉えていただけると幸いです(*^^*)



長々と書きすぎて疲れたので、

ここいらで癒し系の写真を挟んでおきましょう()



これ、受付を手伝ってくださった、

堀川希絵さんと宮本円さんが、受付横の黒板に書いてくれました


良いですよね〜、このストレートな中身の無い感じ!!()


「気難しく考えないでね。」というメッセージが潜んでいるような感じで、

熊谷はとても好きです()



ちなみにですが、

別役さん、今回の「いかけしごむ」は、

「イカの切り身がケシゴムに似ているから」という着想で書かれた作品だそうです。


そんなところからこんな作品が出来上がるの!?と、

ツッコミどころ満載ですが()

でも、だからこそ、

100本以上もの作品を生み出せたのかもしれませんね。


いや、それにしてもイカケシゴムって……()





ここまで、

お芝居の振り返りとこんな作品づくりをしていました、

というお話をしましたが、どう思われましたか??



決して、わかりやすいお芝居ではなかったかと思います。


いや、あのへんてこりんさを、面白い!と思っていただけたなら、

それはそれでわかりやすかったのでしょうか??



見た人によっては、

前回公演の「友達」のほうがわかりやすかった!

という人もいれば、

「友達」よりも「いかけしごむ」のほうがわかりやすかった!と、いう人もいます。



熊谷個人は、「友達」のほうがわかりやすかったです()

本に書かれているテーマとかが、という程度ですが()



こんだけいろいろ説明してて、

今更ですが告白いたします。


好みが分かれる作品をお借りしているのは重々承知です!()


ですので、見終わってから、

「私に読解力が足りないだけかも、、、」なんて、

自分を責めないでくださいね!



お芝居はあくまでも娯楽、楽しみの一つです。


自分の好みだったかどうかも大事ですし、

わからなかったから面白くなかった!と思うのも、

素直な感想です。



ただ、今回の第一主義は、

「わからなかったことを、自分なりの空想で楽しんでみてほしいな。」という作品づくりをしてみました。


皆様が、これから他のお芝居、映画などの娯楽作品を楽しむときの、

一つの楽しみ方として知っていただければ嬉しいです(*^^*)

さあ!

まだまだ続くぜ終演報告日誌!


前回の「友達」も長かったのですが、

今回のもまぁ長い!


それだけ手強かったということです、不条理劇の父の作品は()



これで最後のパートになる!

と、思う!!()




今回の演出の信念は、

「今回のお芝居の正解は、作る人、見る人の数だけ、たくさんの正解が存在する」というものでした。


でも、それだけでは、

この作品を演出した、とは言えません。


正解はたくさんあります。

では今回の演出的にはどんな正解を示していたのか?



確固たる一つの正解ではなく、

あくまでも「今回の演出なりの正解はこうだと思う」というスタンスでの正解です。


お芝居を見終えて理解できていなくても、

「こうだったのかもしれない」をふわっと感じてほしいな、ぐらいの。



まぁ、乱暴に言うと、

今回の演出のネタバレです!()


これは、演出、役者共々、

今回のお芝居の世界観を表現するため、

お芝居の雰囲気を構築するための共通認識としての、

第一主義的、今回のお芝居の正解の一つです。


そんな今回の演出方針を、

皆様にお伝えいたしますねm(_ _)m



気になる方は最後まで頑張ってついてきてください!


熊谷も頑張って書き切ります!!()




まずは、終演報告日誌の序盤に戻ってください()


別役さんの台本には、

舞台セットに関して、こんな指定がありました。


「舞台中央にベンチ」「客席から見て右側に占いの机」


この指定を、今回の演出方針に基づいて変更いたしました。



だって、

女も男も、おんなじベンチに座って横並びで会話をしている、というのが、

このお芝居の世界観を作り上げるうえで、

とても気持ち悪かったから。


村尾さんも、自身の役者心理としておんなじことを言われていました。


「女が、自分の真横に座っているのが気持ち悪い。」と。



当の熊谷はというと……


いえ、熊谷はこれに気持ち悪さを感じませんでした(^_^;)


役どころ上の理由だと思いますが、

おそらくですけど、

熊谷の役が、今回のお芝居の世界観を作っている要だからだと思います。


ハッキリとは答えられないのですが、、、



演出から見ても、相手役である村尾さんにとっても、

熊谷と村尾さんが真横一直線で会話をしているのが違和感があるとのこと。


それは何故か?


また、その気持ち悪さは、お芝居上で活かすべきかどうか。



今回の演出方針は、否。


この気持ち悪さは、違うことに変換して活かすことにしました。



この気持ち悪さとは、

熊谷と村尾さんが「おんなじ空間にいる」ことへの違和感でした。



ですので、物理的に変更することでこの気持ち悪さを解消、変換しました。



「おんなじ空間にいるけれども、少しズレた世界にいる。」という演出方針です。


近いニュアンスですと、パラレルワールドでしょうか?

ちょっと違うような気がしますが、イメージはそれに近いかもしれません。



ですので、それを表現するために、

「舞台中央のベンチに横並び」という指定を、

演出的に変更しました。


でも、役者としては、ベンチに座って会話をしている、という体でお芝居をしています。


あくまでも、舞台上の表現として、です。


ズレた世界を、お客さんに視覚的にわかりやすくするために。



もちろん、わからなくても大丈夫です!


「こうだったのかもしれない。」と思ってもらうための、

あくまでヒントの一つですから!()




物理的に男と女の位置をズラしてみました。


じゃあ、男と女の世界はどこで繋がっているの??



これを、舞台中央に配置した「占いの机」で、

二人の世界が交わっているであろう境界線にしてみました。



台本上の指定では、舞台上の右側に配置されている占いの机ですが、

舞台中央にあるはずだったベンチを違う形にしたことによって、

これも演出的に変更いたしました。




熊谷が、村尾さんの手相を見るシーンがあったのを覚えていますか?


そのシーンを、

舞台端ではなく、舞台中央でやったほうがお芝居的に見映えが良い、

という目的もあるのですが、

「村尾さんの手相を爪楊枝で傷をつけて変える」という熊谷の行動が、

今回のお芝居上、大事な一つのきっかけになる、

という演出方針のもと、

占いの机を舞台中央に持ってきました。


この手相を見る、というより占いをするという行動の結果、

村尾さんは、ビニール袋の中身が、イカではなく、子供の死体である、という事実をつきつけられます。




村尾さんと熊谷とで、ビニール袋の中身が違うのは何故か?


これは、村尾さんが開ければイカ、

熊谷が開ければ子供の死体、という解釈で、

今回の演出方針を定めました。


少しズレた空間で、それでも交わっている二人の世界。


その世界は、占いの机がある境界線上でふんわりと交わっており、

その境界線上で熊谷が開けたことによって、

ビニール袋の中身は、熊谷のリアリズムに染まる。




今回のお芝居のキーワードの一つ、「リアリズム」


ざっくり言ってしまうと、

今回のお芝居は、村尾さんのリアリズムと熊谷のリアリズムが違う、という話でもあります。


なぜそれぞれのリアリズムが違うのかは、

世界がズレているから、という解釈をしてみました。




熊谷のリアリズムでは、

男は子供を殺しており、警察に自首すれば正道に立ち戻ることができる、と男に説きます。


熊谷のリアリズムを受け入れた村尾さんはそれに従いますが、

最終的には、村尾さんは死体で発見され、

そのビニール袋の中身は、村尾さんのリアリズムであるイカがたくさん入っていた。




……あかん、説明すればするほどドツボにハマっていっています()


何回も申し上げているように、

正解は一つだけじゃなく、「たくさん」存在するんです。


そのたくさんさを示すのが、熊谷のリアリズムと村尾さんのリアリズムが違う、

ということなのでしょう。


そういうことにさせてください()



「不条理は受け入れなければいけない。」と、

稽古場で村尾さんがよく言われていましたが、

「なんで?」を突き詰めすぎてもいけない作品が、あるんです多分()


だから、「正解がたくさんある」という楽しみ方になったのではないかと……


そういうことにさせてください()2回目)




長くなりましたが、

今回の演出方針としては、

「男と女の世界がズレている」というのが一番の土台にある、

というお話でした!



これを表現するために、

舞台セットが、こんなへんてこりんな状態になったわけです()


いや、もうそもそも、

台本上の指定からへんてこりんですけどね()





我ながら長すぎてビックリしています。


以上で、今公演「いかけしごむ」の終演報告日誌、

終了です!


ここまでお付き合いくださり、ありがとうございましたm(_ _)m



モヤモヤしていた方、

少しはスッキリできましたでしょうか?


お芝居を見終わってからも、いろんな空想をして楽しめている方、

そのまましがみ続けてください。


イカだけに()




今公演、熊谷にとってはかなりの贅沢公演でございました。


だって、あの村尾さんとの二人芝居ですよ!?


京都の劇団、遊劇体さんの看板役者さんである村尾オサムさんと、

肩を並べるキャスティングという、

なんとも大それた公演!


別名、大先輩一人占め公演です!!()



なんだかんだで、開き直るとか、度胸もそこそこついてきた自覚はありますが、

それでも大先輩と二人芝居というプレッシャーが全く無かったわけではありません。


やっぱり、初日が開けるまではドキドキしっぱなしでした()



それでも、全公演最後まで無事終えることができたのは、

村尾さんが稽古中いろいろと教えてくださったり、

熊谷の個人稽古にお付き合いしてくださったおかげですm(_ _)m



改めまして、今公演とっっっっっても!お世話になりました!

ありがとうございました




安直に手を出してはいけなかったな、とは思った別役実さんの作品でしたが、

振り返ってみると、

別役さんの魔力にまんまと捕まっているのがよくわかります()


たくさんの正解があって、それを許容できるだけの懐の広い、

いや、広すぎる()別役実さんの不条理劇でした





さて!

次回公演はどんなのになるでしょうか??


それはこれから考えます()



今年はお芝居公演とはちょっと違う形のをやってみようか、

という話も出ています。



今後の劇団活動は、劇団HP、劇団の公式SNSにてお知らせいたしますね


これからも見守っていただけると幸いですm(_ _)m




改めまして、

今公演もご来場&応援ありがとうございました!



この不思議な世界観を、

共に楽しんでいただけたなら嬉しいです(*^^*)


ありがとうございましたー




熊谷香月